【オカルト】大学一年生の俺は雪山のペンションに住み込みで働いていた。一切の雑用は俺たちの仕事だ

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midashi


あれは大学一年生の冬、俺はスキーサークルに所属していた。 

サークルは雪山のペンションに泊まり込みで働きながらスキーの腕を磨く。
資格を持つ二年生以上はスキーインストラクターとして働き、一年生はペンションの掃除や調理、雪かきなどの雑用が主な仕事だ。


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名無しのオカルト 2011/08/14(日) 10:32:32.48 ID: ID:73FitfPF0

ペンションで暮らし始めて一週間。
俺は早くも異変を感じていた。

そのペンションは一階がロビー、食堂、大浴場と従業員の寝室。二階が8部屋の客室という小さな造りだった。
地下倉庫が二つあるのだが、何故かその一つに行くと毎回耳鳴りする。また、二階の客室を掃除しているときラップ音を聴くことが度々ある。嫌な感じだ。
いや、きっと高山で気圧が違うので、こういったことも起こるのだろう。
先輩に諌められていたこともあり、何より同じ場所で働くE子を怖がらせたくなかったので、俺は誰にもそれを話せずにいた。

そんなある日。
こもり始めて一ヶ月くらいだったと思う。

俺は客室の掃除をしていた。
典型的な洋室で、ドアを開けてすぐ左手にユニットバス。奥にベッドが二つ並んでいる。いつものように、ユニットバスの掃除をした後でベッドルームに取り掛かる。
同じフロアではE子が掃除をしている。
俺が四部屋。E子も四部屋。
どっちが先に終わるか競争だ。

ベッドメイクまで終わり、最後にもう一度掃除機をかける。
そのとき、耳鳴りとラップ音がほぼ同時に聴こえた。



管理人註:この話は描写が雑多で、起こった現象の割には話が長いです。こういった話より簡潔な話の方が好まれることが多いため、レスを抜粋してあります。(改変、レス内省略はしていません)
元スレの書き込みではエピソード挿入や伏線(?)を張るなどの工夫があります。
完全版はこちらをご覧ください。
【オカルト】完全版・大学一年生の俺は雪山のペンションに住み込みで働いていた。 ペンション内の一切の雑用は一年生の俺たちの仕事だ。 : オカルト速報 - オカルト・洒落怖・怖い話・不可思議な話まとめ -

 

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426名無しのオカルト 2011/08/14(日) 11:52:01.19 ID: ID:AOVBgI2P0

だが、一ヶ月も同じようなことが起こるといちいち反応していられない。
特に気にせず、俺はそのままベッド周りを入念に掃除していた。何しろ、髪の毛一本落ちてるのが見つかっただけで女将にたっぷりといびられるのだ。
その一本を見つける手間があれば、テレビを観てないで掃除を手伝ってほしいものだ。

そんな文句を言いながら床を掃除する俺の視界の隅に、部屋に入ってくる脚が一瞬映る。
脚は、すっとユニットバスへ入っていった。

ああ、E子が自分の分担を終わらせて、手伝いに来てくれたかな?競争は俺の負けか。
と思いながら掃除機をかけ続けたが、一瞬で何ともいえない気持ち悪さがこみ上げる。何か忘れてる。何かに俺は気付いてない。
脳内で誰かが警告している。それは俺自身なのかもしれないし、別の何かか。
手が止まり、掃除機のスイッチを切る。ユニットバスから音は聞こえない。




427名無しのオカルト 2011/08/14(日) 11:53:18.47 ID: ID:AOVBgI2P0

頭が混乱した。
おかしい。ユニットバスに誰かが入ったのを視界の隅で捉えたが、出て行く気配は無かった。
そして何より、ユニットバスの掃除は先程終わっている。E子なら、ベッドルームを掃除する俺を見ればそれにすぐ気付くはずだ。
もう一度、今見た光景を思い返す。
脚がユニットバスに入って行くタイミングでも、違和感があった。それはあまりにスムーズに中に入っていったのだ。
入り口の段差を、乗り越えたようには見えなかった。


直感的に何が入ってきたのか理解した。見てはいけない。しかし、ただの勘違いということもある。そう思いたかった。
嫌な感じが全身に伝わり、見えない何かが警告している。やめろと。

だが、俺はゆっくりとそこに向かう。何もないと安心したかったのと、好奇心もあった。
そして、
俺はユニットバスを覗きこんだ。




428名無しのオカルト 2011/08/14(日) 11:54:29.20 ID: ID:AOVBgI2P0

そこには誰もいなかった。
しかしすぐにおかしな光景に気付く。
ユニットバスのカーテンが閉まっている。

一瞬声をあげそうになる。そんなはずはない。さっき俺はここを掃除した。掃除した後でわざわざカーテンを閉めるようなことはしない。
だが、カーテンは閉まっているのだ。
身体が固まった。考える。
しかしどうしても、今俺の目の前の光景に説明がつけられない。


カーテンを開けろ。そうすれば、何もなく俺の勘違いだったことがわかる。
さぁ早く。

手を伸ばす。
また一瞬身体が硬直する。
さっきからブンブンとハエが飛ぶような音が聴こえる。

部屋の中にハエいたっけ?
いや、耳鳴りか。

開けてはいけない。開けなくては。
開けちゃダメだ。今すぐ開けてくれ。
開けるな。今すぐ開けろ




429名無しのオカルト 2011/08/14(日) 11:55:37.21 ID: ID:AOVBgI2P0

脳内で声がする。
ほんの一分ほどだったのかと思うが、そこで立ち尽くす俺には数十分にも感じられた。

そのとき、階下から俺を呼ぶ声が聞こえてハッとした。
すぐこの場を離れよう。
理由はなんでも良かった。後で誰かに話せばチキン野郎だと言われるかもしれない。
それでもいい。逃げよう。逃げたい。見てはいけない。
見えない何かに動かされそうで、頭が破裂しそうだった。

部屋を駆け足で出る。
後ろに視線を感じたような気がしたが、振り返らずに進む。
階段の前で脚が止まった。

E子は?
すぐに俺は踵を返した。




430名無しのオカルト 2011/08/14(日) 11:56:47.34 ID: ID:AOVBgI2P0

振り返るとそこは閑散とした廊下だ。大丈夫。E子が掃除している部屋まで行き、E子を連れて来ないと。

向かいの部屋にE子はいたらしい。
突然入ってきて手を引く俺に驚いたE子は、「どうしたの?」とか「真っ青だよ?」という趣旨のことを言っていたようだが、俺は『下で呼んでるから来て!』と一喝してE子の腕を掴み、早足で一緒に階段を駆け下りた。

その後のことは、よく覚えていない。
俺は階段下のロビーのソファで寝ていたらしく、意地悪女将にこっぴどく叱られた。

その日は調度飲み会のある日で、俺は酒の勢いもあり、我慢し切れずこれまでに起こった不可解な出来事を一人の先輩に打ち明けた。
先輩は黙って俺の話を最後まで聞いてくれた。
そして、「落ち着いて聞けよ」と言って話し始めた。




431名無しのオカルト 2011/08/14(日) 11:57:45.42 ID: ID:AOVBgI2P0

昔、このペンションで働く学生に霊感のある人がいたらしい。
その頃から今と同じ二つの大学が共同で働いていたそうだが、その学生が山を下りるとき、他大生の一人にあることを告げた。

「実は君は、背中に一人憑いている。俺では祓うことはできないが、引き離すことならできる。」
そうして、置いていったのだそうだ。このペンションに。

やはりと思った。背筋が寒くなる。
しかし、次の先輩の言葉に俺は心臓が止まりそうになった。

「お前も一人で全部やらなくちゃいけなくて大変だろうけど、頑張ってくれよ。みやこさん(女将の名前)にも、もっと手伝ってくれるように俺たちから頼んでやるからさ。」
何を言っているんだ?この人は。
また一瞬、嫌な感じがした。




433名無しのオカルト 2011/08/14(日) 11:59:22.32 ID: ID:AOVBgI2P0

何か勘違いをしている。重要なことに俺は気付いていない。
なんだ?なんだ?

声が震える。
「いや、E子がいるじゃないですか。」

先輩が「は?」と言った。
いやだからS大の一年のE子が…

脳内で声がする。
お前は気付いていない。目を覚ませ。
お前は気付いていない。目を覚ませ。

「だから、今年はS大の一年が少なくて、うちのこもり先には一人も来てないんだって!」
先輩の顔が若干引きつっていた。




437名無しのオカルト 2011/08/14(日) 12:03:09.83 ID: ID:AOVBgI2P0

俺はもうE子の輪郭すら思い出せない。
E子の記憶はあれからほとんど消えてしまった。まるで雪が溶け、水となって流れ出し、純白の山々が新緑に塗り潰されるように、俺の中でE子の記憶は掻き消されていった。

ただ、白い雪を見ると今も思い出す。E子の透き通るような白い肌と眩しい微笑みを。そして、E子にまたいつかどこかで会えるような気がするのだ。
雪は溶け、春が来る。しかし季節が巡れば、また冬が訪れる。

今はまだ会えないが、いつかきっと




引用元:死ぬほど洒落にならない怖い話を集めてみない?276
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