189:名無しのオカルト 2008/01/10(木)06:39:26 ID: 68e/Mjq20
全てが修正液のように白い部屋のベッドの上で
僕の姉さんが眠っている
僕が呼ぶと姉さんは薄く眼を開け、こっちを見て少し笑った
僕は飲料水の入った小さな瓶をかたく握っている
僕自身が一度だけ開いた深い蒼色の瓶を
姉さんの顔を見て僕は少し迷った
「今日は花を忘れたよ。だから今、買って来るから。」
そう言って足早に部屋を出ようとすると
姉さんが「あ。」と小さくひとこと、残念そうな声を発した
僕の姉さんが眠っている
僕が呼ぶと姉さんは薄く眼を開け、こっちを見て少し笑った
僕は飲料水の入った小さな瓶をかたく握っている
僕自身が一度だけ開いた深い蒼色の瓶を
姉さんの顔を見て僕は少し迷った
「今日は花を忘れたよ。だから今、買って来るから。」
そう言って足早に部屋を出ようとすると
姉さんが「あ。」と小さくひとこと、残念そうな声を発した
190:名無しのオカルト 2008/01/10(木)06:39:48 ID: 68e/Mjq20
最も紅い薔薇を一輪、花屋で買って水差しへ
陶器の水差しは無駄に白さを誇っている
漂白されたこの部屋で
薔薇は紅さを失いながら枯れていく
白い部屋での唯二つの変化
陶器の水差しは無駄に白さを誇っている
漂白されたこの部屋で
薔薇は紅さを失いながら枯れていく
白い部屋での唯二つの変化
191:名無しのオカルト 2008/01/10(木)06:40:35 ID: 68e/Mjq20
僕は姉さんに嘘ばかり話す
この世には楽しい事ばかりあるかのように
姉さんはいつもそれを薄く笑って聞いている
だから僕は毎日沢山の嘘を考えている
夥しい数の嘘を
気が付くと、僕が姉さんに語る嘘だらけの世の中は
天国か何かみたいになっていた
この世には楽しい事ばかりあるかのように
姉さんはいつもそれを薄く笑って聞いている
だから僕は毎日沢山の嘘を考えている
夥しい数の嘘を
気が付くと、僕が姉さんに語る嘘だらけの世の中は
天国か何かみたいになっていた
193:名無しのオカルト 2008/01/10(木)06:46:28 ID: 68e/Mjq20
僕以外に誰も訪ねて来ない病室で
僕は姉さんの体を拭く
姉さんの服を脱がせると、小さな胸と痩せたお腹が露わになった
そして姉さんはじっと目を瞑って、僕のする事を待っている
僕は病が汚し、看護婦が薬で汚し、医者が切り刻んだ姉さんの体を、
温かいタオルでゆっくりと拭いていった
姉さんの体からは病と薬の臭いがしたが、
それでもまだ仄かに
懐かしい匂いが残っていた
僕は姉さんの体を拭く
姉さんの服を脱がせると、小さな胸と痩せたお腹が露わになった
そして姉さんはじっと目を瞑って、僕のする事を待っている
僕は病が汚し、看護婦が薬で汚し、医者が切り刻んだ姉さんの体を、
温かいタオルでゆっくりと拭いていった
姉さんの体からは病と薬の臭いがしたが、
それでもまだ仄かに
懐かしい匂いが残っていた
194:名無しのオカルト 2008/01/10(木)06:46:53 ID: 68e/Mjq20
「姉さんは綺麗だね。」
僕がふとそう洩らすと
姉さんは薄紅く染まった顔を背けてしまった
姉さんの痩せた体に残る無数の手術痕
姉さんを繋ぐ点滴
姉さんがこれから味わう苦しみ
姉さんを美しいまま解放する水
僕がふとそう洩らすと
姉さんは薄紅く染まった顔を背けてしまった
姉さんの痩せた体に残る無数の手術痕
姉さんを繋ぐ点滴
姉さんがこれから味わう苦しみ
姉さんを美しいまま解放する水
スポンサーリンク
195:名無しのオカルト 2008/01/10(木)06:47:13 ID: 68e/Mjq20
いつの間にか姉さんは眠っていた
姉さんはこの白い病室から出る事が出来ない
医者のただひとことがこの部屋の出口を塞いだから
だから、僕の姉さんは逃げるように良く眠る
きっと姉さんは眠りながら
僕の唇と喉とが作った天国へ行こうとしているのだろう
そして、僕はここへ曳かれるように帰って来る姉さんの為に
水を一杯のグラスへ注ぐ
それはきっと優しく、姉さんを
本物の天国へと導く
姉さんはこの白い病室から出る事が出来ない
医者のただひとことがこの部屋の出口を塞いだから
だから、僕の姉さんは逃げるように良く眠る
きっと姉さんは眠りながら
僕の唇と喉とが作った天国へ行こうとしているのだろう
そして、僕はここへ曳かれるように帰って来る姉さんの為に
水を一杯のグラスへ注ぐ
それはきっと優しく、姉さんを
本物の天国へと導く
197:名無しのオカルト 2008/01/10(木)06:52:49 ID: 68e/Mjq20
空になった瓶を捨てて部屋へ戻ると
姉さんは仰向けのまま薄ぼんやりと目覚めていた
「あなたが居なくなると、」
天井を眺めながら姉さんがふと言った
「この部屋から、見る物が失くなるわね。」
コップの中からいつまでも消えずに残っている
ひとつきりの小さな泡を気にしながら
僕は姉さんの言葉を聞いていた
(こんな液体で姉さんは本当に解放されるのだろうか?)
ふと涌いたその疑念は、姉さんが水をひとくち啜って
「冷たい。」
と言って笑った時にも続いていた
姉さんは仰向けのまま薄ぼんやりと目覚めていた
「あなたが居なくなると、」
天井を眺めながら姉さんがふと言った
「この部屋から、見る物が失くなるわね。」
コップの中からいつまでも消えずに残っている
ひとつきりの小さな泡を気にしながら
僕は姉さんの言葉を聞いていた
(こんな液体で姉さんは本当に解放されるのだろうか?)
ふと涌いたその疑念は、姉さんが水をひとくち啜って
「冷たい。」
と言って笑った時にも続いていた
198:名無しのオカルト 2008/01/10(木)06:53:34 ID: 68e/Mjq20
姉さんは僕が差し出したコップの水を
たったひとくち啜って死んだ
しかし、僕は罪に問われなかった
姉さんがベッドの下にメモを隠していたから
「ごめんなさい。」とだけ書かれていたそれの意味は誰も知らない
なのに誰かがさりげなく遺書だと言い出して
僕以外の皆はすぐ納得した
僕が姉さんに渡したコップからも、ゴミ箱へ捨てた蒼い瓶からも
僕の指紋など出なかった
姉さんの指の跡だけが薄く、付いていたそうだ
僕はひとこと「姉さんは苦しがっていた。」と誰かに言った
そして、姉さんは自殺したという事になって
葬式で見覚えのある女が泣いた
僕の部屋には今、枯れきった薔薇が一輪だけ飾ってある
姉さんと僕は
お互いにひとりぼっちになってしまっていた
たったひとくち啜って死んだ
しかし、僕は罪に問われなかった
姉さんがベッドの下にメモを隠していたから
「ごめんなさい。」とだけ書かれていたそれの意味は誰も知らない
なのに誰かがさりげなく遺書だと言い出して
僕以外の皆はすぐ納得した
僕が姉さんに渡したコップからも、ゴミ箱へ捨てた蒼い瓶からも
僕の指紋など出なかった
姉さんの指の跡だけが薄く、付いていたそうだ
僕はひとこと「姉さんは苦しがっていた。」と誰かに言った
そして、姉さんは自殺したという事になって
葬式で見覚えのある女が泣いた
僕の部屋には今、枯れきった薔薇が一輪だけ飾ってある
姉さんと僕は
お互いにひとりぼっちになってしまっていた
215:名無しのオカルト 2008/01/10(木)17:33:00 ID: /p3u/ijOO
姉萌え…これは怖い話ではないな。切ない話のツボをコンパクトにまとめる技量に、あざとさが光った。余韻が残る作品。
気違い同僚(【怖い話】最初に入った会社が超ブラック。そんな会社で働いているととんでもないモンスターが入社してきた。彼は俺の隣の席になった。)…まず、純粋に面白かった。暴力と身勝手さを併せ持つ奴いるよなあと身近に感じる怖さだね。短いがG県厨に近い、興味深くて怖い話だった。
気違い同僚(【怖い話】最初に入った会社が超ブラック。そんな会社で働いているととんでもないモンスターが入社してきた。彼は俺の隣の席になった。)…まず、純粋に面白かった。暴力と身勝手さを併せ持つ奴いるよなあと身近に感じる怖さだね。短いがG県厨に近い、興味深くて怖い話だった。
217:名無しのオカルト 2008/01/10(木)18:37:53 ID: Mmpx31asO
姉萌え、ヤクザの話はどっちも怪奇現象的な怖さじゃないけど面白い。
>>215G県厨って同人作家の話?
>>215G県厨って同人作家の話?
引用元:%quote_title%
コメント
コメントを読み込んでいます…