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怖い話

7月6日、下山総裁が轢死体で発見された日、私は彼にあっていた。

コメント 3 編集・公開: オカルト速報

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22: 7月6日その1 03/09/15 16:18

これは4年前の7月6日に体験した出来事です。

現在急ピッチで建設が進んでいる常磐新線、通称つくばエクスプレスはご存じでしょうか。
研究学園都市つくばと東京都心を直結する新しい通勤路線ですが、この常磐新線は北千住駅
で常磐線や東武線、都心へ向かう各地下鉄線と接続することになっているため、北千住駅の
北側で荒川を渡るとすぐに、常磐線・東武線と交差しなければなりません。しかもここは
常磐線と東武線が交差している部分でもあり、また住宅密集地でもあるため用地の確保が
難しい場所でもあります。
このため常磐線の線路をほんの少し北側へ移動させ、常磐新線敷設用の用地を確保する
ための工事が行われていました。
前置きが長くなりましたが、この常磐線移設工事でバイトしていた時の事です。



23: 7月6日その2 03/09/15 16:23

日中は常磐線の電車がひっきりなしに通るため、工事はほとんど夜間を中心に
行われていました。梅雨の真っ盛りで降ったりやんだりの雨が鬱陶しい季節
でしたが、その日は夜に激しい雷雨となったのを覚えています。
夜中の12時過ぎ頃、雨も上がって少しひんやりした空気が肌寒いくらいの中で
工事をしていた時のことでした。工事地点より綾瀬駅寄りの線路上に、背広姿の
男の姿が見えます。その時働いていたのは僕たちバイト数人と建設会社の方達
だけでしたから、みんな当然作業着を着ています。
「お前、ちょっと注意してこい」
現場監督に言われて、私はその男の所に歩いて行きました。
最初は酔っぱらいが調子に乗って線路内に入ってきたものと思い、危険だから
すぐ外に出るように諭すつもりでいたのですが、近くへ行くと何やら様子が
違うようです。
「こんなところで何やってるんですか?危険ですから、すぐここから出て下さい」
とりあえずこう注意をすると、その人はこちらを振り返って、
「やあ、すみません。すぐに外へ出ますよ」
とにこにこ顔で答えました。50代くらいでしょうか、面長で眼鏡をかけ、
中年にしては体格の良い、品の良さそうないわゆる紳士風の人でした。
とても怪しい人には見えませんでしたし、もちろん酒に酔っているふうでは
ありません。
「こんな時間にこんなところでどうしたんですか?」
「いやね、ちょっと訳があってこの場所に来たくなったもので」
と彼が答えます。
「おーい、ちょっと休憩するぞー」
その時、現場監督の声が聞こえました。


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24: 7月6日その3 03/09/15 16:25

休憩時間中、私はこの紳士からずっとその場所で話を聞いていました。
聞くと、その人はA新聞社社会部の記者の方で、この数ヶ月に渡ってある事件を
追っていたのだそうです。そのまとめが今日終わり、最後にどうしてもこの場所へ
来てみたくなった、と言っていました。
「君が生まれる20年以上前のことだよ。この場所で轢死体が発見される事件があった
んだ。それが当時の国鉄総裁の下山さんという人で、自殺なのか他殺なのか、その
真相は今もって闇の中なんだな。僕はその事件をもう一度洗い直していたという訳だよ。
下山事件って、聞いたことないかい?」
恥ずかしながら日本史はトンと興味がなく、その時初めて聞いた事件です。歴史に
詳しい方ならご存じかもしれませんが、国鉄総裁だった下山さんという方が行方不明
になり、その翌日に常磐線の線路上で轢死体となって発見されたのだそうです。
東武線の線路をくぐって数十メートルほど綾瀬寄りに来たあたりの場所で話を聞いて
いたのですが、まさにこの場所だよと彼は言いました。
それを聞いてさすがに背筋がゾッとしました。

下山事件にはいろいろ不透明な部分があるそうで、その隠された真相を探る試みは
過去に何度も行われてること、松本清張や大野達三などの作家もその著書で下山事件
の真相に迫ろうとしたこと、自分の先輩記者のY記者という人が生涯をかけてこの
事件を追っていた事などを話してくれました。
そして今日、下山総裁が最後にたどったと思われる足跡をたどり、最後にこの場所を
見ておきたくなったのだと彼は言いました。


25: 7月6日その4 03/09/15 16:26

「おーい、始めるぞー」
再び現場監督の声が聞こえました。
「いや、迷惑をかけてしまったね。つまらん話で時間をつぶしてしまい、申し訳
なかった」
そう言うと彼は名刺を差し出して、
「たぶん、1週間後のA新聞に僕の記事が載ると思う。もし興味があれば読んで
みてくれると嬉しいね」
と言って、その場所を去って行きました。
もらった名刺をすぐさまポケットに突っ込んで私は仕事場に戻っていきました。
その後しばらくは、「轢死体が発見された場所」だということが頭から離れず、
どうしても彼が言っていた「まさにこの場所だよ」というその場所が気になって
仕方なかったです。バラバラになった死体を想像すると、ね~。
バイト中、ずっと背筋に寒い思いを感じながら働いていました。

おわり。

え?
全然怖くなかった?
う~~ん、私には充分すぎるほど怖い思い出なんですがね~・・・
だって、轢死体が見つかった場所ですよー、そんな場所で夜中に働いてみて
ごらんなさいよ。まあ、実際幽霊を見たわけではありませんけどね、でも、
洒落にならないくらい怖いですよ?

・・・おっと、それから実はこれには後日談があるんですよ。


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26: 7月6日その5 03/09/15 16:27

その紳士と話をした1週間後のこと。
やっぱり何となく気になってA新聞に目を通していたのですが、その人の記事は
どこにもありませんでした。
「何だよ、結局ボツにされちゃったのか?」
何ヶ月かかけてまとめた記事だったと言っていたので、どうしてボツになった
のか、やっぱり気になります。あのあと、自分なりに少し下山事件のことを調べて
みたりもして、ちょっと興味が湧いたこともあったし。以前Y記者が核心に
近づいた記事を出そうとした時にも上からの圧力でもみ消されたことがあったと
彼から聞いていましたから。
で、彼と連絡を取ってみようと思い、財布にしまっておいた名刺を取り出して
見てドッキリ。名刺に書いてあったのは、

「日本国有鉄道 総裁 下山貞則」

もー、あのオッサン冗談きついわーと思いながら、聞いていた勤務先である
A新聞東京本社社会部の方へ電話をしてみると、「そんな人はいません」との
つれない返事。一応社会部の人に下山総裁の記事の掲載のこと聞いてみましたが、
丁度下山総裁が亡くなって50年になるから7月中にその特集記事を組む予定は
ある、とのご返事。他の新聞社でも同じように特集記事を組む予定だけど、
しかし問い合わせているような記者は他社にも心当たりがない、と。
「眼鏡かけた50歳くらいの人でしょ?いや、心当たりないなー。下山事件の
担当者ならたいがいは面識あるんだけど、ねえ。まさか君、下山総裁本人に
会っちゃってたりして? わっはっは、冗談だけど」
いや、でもそうなると冗談じゃないみたいなんです~。
だって、そうすると彼はいったい何者だったんです~・・・?
誰かを驚かすためにイタズラするようなアフォな人には見えなかったし。
それに、すっごく真剣に下山事件のことを語っていたんですよ~?
まさか、ねえ・・・。

ちなみに7月6日って、下山総裁が轢死体で発見された日だそうですけど。
私が彼に会ったのも7月6日ですけど。
まさか、ねえ。


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